小学生に「足し算」を教えるとしよう。
「数字と数字を足すと、どんどん数字が大きくなっていくんだよー」
…このとき実は、教える人は心の中で、
「でも、負の数だったら、足したとき合計は小さくなるんだよなあ…」
と思っているかもしれない。
たしかに 10 + (-4) = 6
なんだけど、じゃあこれを、足し算を習ったばかりの小学生に教えるのが正しいやり方か?
…って言われると、「いや、それはまだ言わなくて良いでしょ」と言う人が多いと思う。
ここで正確性を優先して、こんな風に小学生に教えるのは、(一部の例外を除いて)むしろ不適切だろう:
「前提として、実数の範囲で考えるよ。虚数に大小関係は無いからね。で、正の数に、別の正の数を加えた場合、その合計値は、もとの数より大きくなります。じゃあ、計算ドリル、みんなでやっていこうか!」
・・・こんな風に、
教える人というのは、その人の知識が深ければ深いほど、
「今の段階ならこう教えた方が分かりやすい」
VS.
「この教え方は、実は正確ではないんだけど…」
という2つの気持ちが "せめぎ合う" ことが多くなるんじゃないかと思う。
英語なら、たとえば affect・effect という2つの似た単語がある。
たいてい高校生は、
affectは「影響を与える」という動詞、
effectは「影響、効果」という名詞だと習うことになる。
そしてほとんどの場合、その理解で問題なく英語を使いこなしていける。
だけど実は、
動詞と習うaffectにも名詞の意味があるし、
名詞と習うeffectだって実は動詞で使われることもある。
ただ、その頻度はかなり小さい。
たとえば、effectという形で、名詞・動詞で使われる確率をグラフにすると、こんな感じ:
ここで、もう既に英語がすごく得意な子に、
「実はeffectって、動詞の意味もあってね…」
と教えるのは良いだろう。「へー、おもろいなー」と興味が高まるかも。
けど、
まだまだ単語力もこれからっていう子に、
「effectは名詞で使われることがほとんどだけど、動詞で使われることも実はあって…」
「affectも同様に…」
と最初から全て伝えるのが、本当にベストなのか?
といえば、「最初はそこは言わない方が、頭の中を整理しやすいんじゃないかな」という気がしてくる。
すごく知識が豊富な人が、必ずしも教えるのが得意じゃないことがあるのは、
こういう事情も関係しているかもしれない。
自分がすごく好きなゲームやスポーツがあって、
初心者の人に教えるとなると、
「ううう… これも言いたい… あれも口を出したい…」
「けど、今これ言っても、混乱するだけだよな… 今日は言わんとこ… ああ言いたい…」
というように、"さじ加減" が難しい。
ここを間違えると、相手が
「一気にそんな言われても分からん!やーめた!」
と感じてしまうことだってある(悲しすぎる)。
英語のスピーキング練習で、初心者が、いちいち
「そこの動詞、sが抜けたよ!」とか
「その単語、発音ちゃう!」とか言われたら、
萎縮して英語で話すのが嫌になるかもしれない。
でも、上級者を目指す人なら、むしろそういうアドバイスが有益で助かる!というケースもある。
・・・なんてことを、教えながら思ったりしている。
授業中、「基本的には…」とか、「例外もあるんだけど、今の時点では…」のように言うときは、
心のなかで「うー、本当はここは正確に教えたい。教えたいんだけど、そこを話しすぎると、みんな混乱するに違いない…」
みたいな葛藤があったりする。
聞いてくれている側は「なんか、回りくどいこと言ってんなー」ぐらいの気持ちかもしれないんだけど。
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GW期間、前回の記事を書いた後にもまた別の卒業生たちが遊びにきてくれて、
同じバーに行ってきた。
元気そうで(というか元気だった)、何より! またおいでー。
そして、GW終盤にも、卒業生『カタン部』を開催。
関東の大学に進学している子も帰省していて、一緒に楽しい(&バチバチした…)時間を過ごすことができた。
またやります、卒業生メンバーはウェルカム!
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卒業生の子たち、そして保護者の方から、色んな差し入れをいただきました。
高校生の子たち(とJeff)が大喜びで食べています、ありがとうございます!!