5月もあと少し。
1年生クラスの英文法は、「助動詞」に入ったところ。
この助動詞、とても奥深い。
たいてい「助動詞」と聞くと、「ああcanとかwillとかね」という印象で終わりがちなんだけど、
これらが無かったら、言葉で表現できる世界がとても狭くなってしまう。
たとえば「あ、あそこにいる人、Timだ!」と思ったとき、
一番シンプルなのは That's Tim! となる。
でもこの文は、もう断定しきってしまっている。
「あれーTimやと思うなー違うかもしれんけど」ぐらいの気持ちなら、
That may be Tim. とか
That might be Tim. みたいな表現にも変えられる。
(mightはmayの過去形だけど、ここでは過去の話をしているわけではないというのもポイント。)
「いや、Timに違いない!」と思ってるなら、
That must be Tim!
と言うこともできる(ここでは『~しなければならない』という意味じゃないことに注意)。
何しろ、名前からして「助動詞」だ。
他の動詞を助けることで、表現の幅をめちゃくちゃ広げてくれているのが助動詞ということになる。
なかでも、canやcouldは登場する頻度がとても高い。
I can play the guitar.
みたいな中学校で学習する文ひとつとっても、実は奥深い。
試しにこれを過去形にしてみよう。
I could play the guitar when I was a kid.
⇧ ChatGPT作
子どもの頃、ギターを弾けたんだよ、っていうこと。
(※) I could solve the puzzle yesterday.
「・・・いや何が違うの?」と思うだろうけど、これは(少なくともテスト等では)避けた方が良い表現だ。
「子どもの頃、ギターを弾けた」っていうのは、
「子どもの頃、弾こうと思えば弾けたんだよ、弾く能力があったんだ」ということ。
他方、「昨日パズルを解けた」となると、
これは「解く能力がありました」っていう話じゃなくて、
実際解いたわけだから、もうその能力は発揮済み、っていうことになる。
すると、「やろうと思えばできる、そういう能力をもっている」というcan/couldの意味合いからズレてくる。
じゃあどう言えばよいかというと、
was able to を用いたり、あるいは単純に I solved the puzzle yesterday. とsolveを過去形にしてしまえばいい。
(ハイレベル補足: I managed to solve ... のような表現にするオプションもある。また、現実にはこのルールを無視したような英語にもけっこう出くわす。)
…と、1回目はまずこのあたりまで教える。
ただし…。
I could see ~ (~が見えた) とか、
I could tell ~ (~が分かった)とか、
こういうときはcouldを使ってOKという例外もある。
何でかっていうと・・・
という話を最初から進めてもいいんだけど、
1回目でここまで伝えてしまうと、ほぼ確実に頭の中が混乱して、
「あー面倒くさい、もうとりあえず『できる』って意味だけ覚えとけばいいや!」
となりかねないよね。
というわけで、1回目はここまでは話さない。助動詞を1周マスターしてもらった後に、補足で伝えるようにしている。
⇧こういう、「どこまで正確に教えるのが本当に生徒の子のためになるんだろう?」みたいな話は、以前にも別の記事で書いたので、興味のある方はどうぞ:
「はーい今から割り算を教えまーす。まず注意なんだけど、数を0で割ることは禁止されていて・・・」
そんなこんなで、can/couldは「できる・できた」って意味だけでも面白いのに、
この助動詞には他にも「~しうる(~する可能性あがる)」といった別の意味合いもあって(むしろこちらの方が長文を読み解くうえでは重要かもしれない)、
そうやって、人間が表現できる世界をぐんぐん押し広げてくれている。
時間の制約もあって(助動詞の他にも英語力を高めてくれる文法事項がたくさんある!)、
授業で全て語りつくすことは難しいんだけど、
少しでも英文法が生徒のみんなにとって使いこなせる武器になってくれるように教えていきたい。