2017年3月18日土曜日

ライティング問題と、加点vs減点


前回に続いて、たまには(?)、ちゃんと英語のことを書いてみようと思う。






「英語の問題」といってもたくさんある。

長文問題、文のタイトルを選ぶ問題、穴埋め問題…このあたりは、Reading問題に分類できる。

そういえば、Reading系の問題は、こんな風にいろいろと分類して話すことが多いけど、Listeningは、単に「リスニング伸ばさなあかんわー」のように、ひとまとめに語られることが多いような気がする(もちろん、Listeningだって多種多様な問題の種類が現実にはある)。

ましてや、SpeakingWritingに関しては、中高生が「あー最近Readingは伸びてきたけど、Speakingいまいちやから、もうちょい頑張らんとな」とか会話しているのを聞くこと自体が稀(まれ)だ。

この状況も、これから数年で大きく変わると思うけど、今日 注目したいのは、Writing問題。







考えてみると、「ライティング」の問題だって、よく見てみると、かなり種類がある。





たとえば、「次の日本語を、英語に直しなさい」という、いわゆる和文英訳問題(京大、阪大、大阪市大などなど、この地域の高校生が受ける大学でもかなり出題される)。

これも、どちらかといえばライティング問題に分類できると思うけど、かなり自由度は低めだ。あくまで、提示された日本語をもとに表現しないといけない。






ちなみに、「次の単語を並び替えて、意味の通る文を作れ」という整序問題も、一応これは「ライティングの力を間接的に測定する」という意味合いがあって、ライティング問題の一種といえなくもない。だからこそ、英検の3~2級に本格的なライティング問題が登場したために、昔からあった整序問題の方は削除されたんだろう。

もちろんこれも、自由度という意味では低い。







もうすこし自由度が上がると、ある会話文があって、その途中の文を文脈に合うように自分で作る問題(京大では最近登場)や、

条件に合わせてメール文を作る問題(GTEC CBT等)、写真を描写する問題(TOEIC SW等)、

あとは聞き取った音声や、読み取った文章の内容を自分で要約する統合型の問題(TOEFL iBT等)もある。

今年から始まった、大阪府の高校入試(英語C問題)リスニング問題のラストのやつも、これにあたる。







そして、自由度がもっと上がると、これがいわゆる自由英作文と呼ばれる問題だ。意見展開型といってもいい。

お題があって、それに対する自分の考えを、まとまった語数で述べる。





「宇宙開発にお金を使うより、その予算を、地球上の人間の生活を向上させるためにまずは使うべきだ」という意見に、賛成か反対か?

みたいなお題に対して、自分の意見、その理由、具体例…などを駆使して書いていく。(今回の大阪府の高校入試問題でいえば、ラストの第9問)

もちろん、賛成or反対だけじゃなくて、「~~という問題に対して、どういった解決策があるでしょうか」みたいな問題が出たり、そのバリエーションもいくつかあるが、

こうした「自分で内容を考えて書いていく問題」の自由度が一番高いことは間違いないんじゃないかと思う。






個人的には、このように自由度が高い分、この形式はとても好きだ。

たとえば、insurmountableという単語がある。in+sur+mount+ableと分解すれば分かりやすいけど、要は「乗り越えられない」という意味だ。

高校生が、この単語を覚えたとする。このとき、今までだったら「長文で同じ単語が出てきたらラッキーやな」ぐらいだけど(ちなみにinsurmountableはなかなか出てこない…)、

意見展開型のライティング問題があれば、「この単語、スペルはむずいけど、ライティングのときに使えそうやな。This plan has many insurmountable problems.みたいに」と思えれば、単語を覚えるときの意気込みが違ってくる。

もちろん、覚えたての単語を使うと、「この単語使いたいのはわかるけど、こういう場面では使わんから、こっちの単語にしとこや」とか直されたりするわけだけど、そういうやり取りをとおして、自分で正しく「使える」ようになっていく。

何度か書いたかもしれないけど、こうやって「自分で使いこなせる」言葉を運用語彙と呼ぶ。一方で、「見て意味がわかる」レベルの場合は、自分にとってその言葉は認識語彙ということになる。

そうすると、意見展開型のライティング問題をトレーニングしていくなかで、認識語彙が運用語彙へと進化していってくれる機会が増えることになる。







insurmountableほど難しめの単語じゃなくても、たとえばapproximatelyという単語がある。

これは「おおよそ」という意味を高校生で覚える単語だけど、「見て意味は分かるけど、自分では書けない」という高校生が多いんじゃないかなと思う。

approximatelyとか難しい単語使わなくても、自分で書くときはaboutの方で書けばええやん」というわけだ。






これが、日本語を英語に直す、英訳問題ならそれでいいと思う。スペルのミスで減点されてもつまらないし。

ただし、意見展開型の問題だと、少し複雑になってくる。

(これも何度か書いたことがあるけど、)ライティングの採点をするときの姿勢として、減点法加点法という2つの方向性があると思う。

減点法は、スペルミスや文法ミスで、どんどん点数を引いていくやり方。

一方の加点法は、レベルの高い語彙や文法を使っていたら、それを積極的に「いいねー」と加点していく方法。

おそらく、実際の採点現場では、「減点法のみ」でつけるか、「減点法と加点法をどちらも」使う、このどちらかのパターンが多いんじゃないかと思う。

それで、「減点法のみ」での採点だと、これはもう受験者はとにかくミスだけは避けなければと思うようになるから、approximatelyなんて書いている場合ではなくなり、「aboutの方でええやん」というのは大正解になる。

一方、加点法も入ってくると、「about使うより、approximatelyとか使って、ちょっとこの単語使えるんやぞってことをアピールした方がええかもなあ」ということになってくる。

4技能型の英語テストでは、ライティングを採点する際に、「語彙や文法のミスが少ない」だけじゃなくて、「多様な語彙や文構造を使っている」点も評価基準に入っていることが多い。

「ミスが少ない」の方は減点法の考え方で、「多様な~」という方は加点法 的な姿勢が見えてくる。








もうここは議論が分かれるところで、「ミスなく、他人に正確に伝わる文を書けるようになるべきだ」という考え方からいくと、減点法だけで良い気もしてくるけど、

それだけだと、より高度な英語表現を身に着けようというモチベーションが下がっていってしまうという危惧もある。

だから個人的には、ライティング問題では「加点法」的な視点もどんどん取り入れてあげるのがいいんじゃないかと思う。

「このスペルミスはあかん。ダサいし、内容の説得力が弱まったらもったいないやろー」とか言いつつ、「…でも、簡単な単語に逃げずに、こっちの単語の方で勝負しようとしたのはエラいなぁ~」という、

そういう両面的な見方で評価されるようになると、生徒の子も、「やったら次は、変なミスせずに、この難しい単語or文法を使って書けるように頑張ろう」って思えるようになるんじゃないだろうか(それを繰り返すと、結果的にレベルの高い文を自然と書けるようになっていく可能性が高まる)。







これが、特に学校の入試とかだと、採点基準が明らかにされていないことが多いので、受験生としては悩みどころだ。

今回の大阪府の高校入試問題を見てみると、「採点のポイント」の1つとして「文法や語法、および単語のつづりが正確であること」というのが入っていた。

これを見た限りでは、おそらく単語・文法に関しては「減点法のみ」の方針で採点するのが原則、となっている気がする。が、具体的に、各学校が実際はどういう方針で採点しているのかは、それは内部の人にしか分からない。

「うちの学校は、加点法的な視点も取り入れて採点しますから、勇気をもって難しい単語や文法にも挑戦してくださいねー」とか言ってくれる学校があれば嬉しいけど、学校単位でそう発表するのはかなり難しいだろう。






…けっこう長くなってしまった! 

ライティング問題の分類と、語彙や文法の「減点法」vs.「加点法」のことを書いただけで、

まだまだライティングのことは書ききれないぐらいだけど、今日はこの辺りで!