2019年6月15日土曜日

新しい大学入試システム(2019.12.21更新)


(2019.11.1追記)
文部科学省より、令和2年度の大学入試において、「大学入試英語成績提供システム」の導入を延期するという発表がありましたので、主に「キーワード❶」のみ参考にしてください。

なお、詳しくは 大学入試英語成績提供システムの導入延期について という記事を書いたので、こちらをご参照ください。





キーワード❶ 大学入学共通テスト


「センター試験」は2020年1月の実施で終了し、その次の学年からは、「大学入学共通テスト」が始まります。

実施されるのは、センター試験と同じく、高3の1月中旬あたりです。


【引用-太字は引用者による】
大学入学共通テストの実施期日については、1月 13 日以降の最初の土曜日及び翌日 の日曜日とし、令和3年度大学入学共通テストの実施期日は、令和3年1月 16 日(土) 及び 17 日(日)とする。
【ソース:注1】


入試の話をするときは、数字がややこしいので注意を要します。
たとえば「2021年度の入試」というとき、これは2021年4月から大学生になりたい人向けの入試(つまり2021年1月に共通テスト)なので、2020年4月以降、すなわち「2020年度」の時点で高校3年生の人はこの入試に挑戦することになります。

それで、この「共通テスト」は2021年度入試からスタートしますが、当面の出題教科・科目は、現行のセンター試験と同様となる予定です(ソース:注2,3)。

ただし、2022年度から新しい学習指導要領が始まるので、2022年度に高1(→2024年度に高3)になる人たちが受ける共通テスト(ということは2025年度入試…ややこしい)からは、出題教科・科目は見直されます。


【引用-太字は引用者による】
次期学習指導要領において高等学校の教科・科目が抜本的に見直される予定であることを踏まえ、平成36年度以降は教科・科目の簡素化を含めた見直しを図る
【ソース:注2】


なお、英語に関しては次に紹介するので置いておいて、その他の「共通テスト」の特徴に、国語("現代文"分野)と数学("Ⅰ"分野)で、記述式の問題が登場することが挙げられます。
↑ (2019.12.21追記)
国語・数学の記述式問題も導入が見送られました。



キーワード❷ 英語の資格試験


センター試験の場合、「外国語」という教科のなかに「英語」という科目が入っており、うち「筆記」200点分、「リスニング」50点分、という配分です(合計250点だが、それを0.8倍して200点分に換算することが多い)。

一方、「共通テスト」でも「英語」がありますが、ここでは「筆記」と「リスニング」の配点が等しくなります(ただし以下の引用文から分かるように、大学にも裁量あり)。

【引用-太字は引用者による】
グローバル⼈材の育成を⽬指した英語教育改⾰の⽅向性の中で⾼等学校学習指導要領に⽰す4技能のバランスの良い育成が求められていることを踏まえ,「リーディング」 と「リスニング」の配点を均等とする。ただし,各⼤学の⼊学者選抜において,具体的にどの技能にどの程度の⽐重を置くかについては,4技能を総合的に評価するよう努めるという「⼤学⼊学共通テスト実施⽅針」(平成 29 年7⽉)を踏まえた各⼤学の判断と なる。 
【ソース:注3】


ただし、新しい大学入試では、「大学入試英語成績提供システム」という仕組みも活用がはじまります。こちらは、4技能型の「資格・検定試験」の成績を入試でも活用しようというものです。「資格・検定試験」でイメージが沸きにくければ、ひとまず英検やTOEFLなどの英語テストを想像してください。(『資格・検定試験』の内訳について詳しくは:大学入試センター「大学入試英語成績提供システム基本情報」


具体的には、高3の4月~12月の間に受験した試験の結果(※最大2回まで)が、「大学入試英語成績提供システム」を通してそれぞれの大学に送られます。
この「システム」に成績を登録するには、申し込み時に、1人1人に割り振られた共通IDというIDを記入することになります。



まとめると、英検などの「資格・検定試験」の成績と、「共通テスト」の英語の成績、この2種類が存在することになります。これらをどう活用するかは各大学に委ねられているので、受験生は、志望校の情報を必ず確認する必要があります。

ちなみに、文部科学省の
というページでは、2021年度入試で具体的に各大学がどのようにこれらの成績を活用するのかを取りまとめています(5/31/2019段階の情報である点に注意)。

これによれば、「出願資格として活用」する、また「点数化して加点」するパターンが多いようです。例えば、「資格・検定試験」でCEFRのA2レベル以上を取得していることが出願するための条件で、そのうえで「共通テスト」の英語の成績を合否判定には使う…等です(CEFRについては次の項で紹介)。

各大学がどう活用する予定なのかを全て調べるのは大変ですが、河合塾が「2021年度入試 予告リンク集」という非常に便利なページを提供しています。ここでは、各大学が情報を載せているページへのリンクが一覧化されているので、志望校の情報を知りたい人は活用すると良いでしょう。


※なお、将来的には、4技能を測定できる「資格・検定試験」に一本化し、2技能の「共通テスト」の英語試験の方は終了する可能性もあります。

【引用-太字は引用者による】
共通テストの英語試験については、制度の大幅な変更による受検者・高校・大学への影響を考慮し、認定試験の実施・活用状況等を検証しつつ、平成35年度までは実施し、各大学の判断で共通テストと認定試験のいずれか、又は双方を選択利用することを可能とする。
【ソース:注4】

ここでいう「平成35年度まで」というのは「2023年度まで」ということで、つまり「2024年度入試まで」を指すと思われますが、これはすなわち「2025年度入試」以降は「資格・検定試験」に一本化する可能性があるということです(これは、上で紹介した、新しい学習指導要領に基づいた『共通テスト』の開始時期と一致)。

ただし、現在「資格・検定試験」を活用する妥当性については議論が進行中なので、この点は変更される可能性もあるでしょう。注視しておく必要があります。




キーワード❸ CEFR


CEFRと書いて、セファールと読みます。「大学入試英語成績提供システム」で使われる「資格・検定試験」は1つだけではないので、AさんとBさんで別の試験を受けた場合、2人の成績をどう比べるのか? という問題が生じます。そこで、それぞれの試験結果を、CEFRという基準を使って、比較できるようにするわけです。

具体的なCEFRの説明、対照表については、文部科学省の
というページにあるPDFファイルを参照すると読むことができます。

以下の表は、そこから引用したものです。例えば、出願要件としてCEFRの「A2」レベルを要求する大学が多く見受けられますが、これは英検でいえば準2級レベルということがこの表から分かります(※ただし、大学によって独自に基準を定めることも考えられるため、やはり最終的には自分の志望校のウェブサイトなどで確認することが肝要)。



(↑クリックで拡大)




おまけ 英検について

「資格・検定試験」は多く存在しますが、おそらく英検を選択する人が多いと予想されます。

この英検に関して注意が必要なのは、「ペーパーテストの一次試験と、スピーキングの二次試験」に分かれている、おそらく普通「英検」と聞いて思い浮かべるであろう「従来型」英検は、「大学入試英語成績提供システム」では採択されていないという点です。

そこで、英検の成績を「大学入試英語成績提供システム」で使う場合、「従来型」以外の受験方法(『英検CBT』・『英検2020 1 day S-CBT』等)を選択する必要がでてきます。

ただし、「従来型」英検は「大学入試英語成績提供システム」で活用することができないというだけで、このシステムを使わない場合は別の話です。例えば、個別の大学の推薦入試で「従来型」英検の成績を使用できるかどうか等については、その大学の要綱を確認する必要があります。

【参考】
  ↑(8/26追記 より詳しい説明を英検協会が公開したので差し替えました)




(注1)
文部科学省「高大接続改革」→「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施大綱」PDFファイル
(注2)
文部科学省「高大接続改革」→「大学入学共通テスト実施方針」PDFファイル
(注3)
(注4)