(5/27追記)
新傾向のリスニング問題に対応した、実戦問題集を作ってみました。
興味のある方は こちらの紹介ページ もご覧ください。
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すごく真面目なタイトルにしてしまった・・・が、
とにかく、大阪府が、高校入試の英語問題に大改革を起こそうとしている。
サンプル問題を見たけど、これは凄まじかった。
「TOEFLへの橋渡し」という感じの、かなり気合いの入った問題になっている。
・・・と、それを見てみる前に、まずニュースを確認しておこう。
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大阪府教委「難易度別入試」導入へ 国数英を3段階で
国際社会で通用する「使える英語」の習得を目指している大阪府教委が平成29年度の府立高入試で予定している英語入試改革に合わせ、英語、国語、数学の主要3教科で難易度別に3種類に分けた入試問題を導入する方針であることが26日、分かった。
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この日の記者会見で中原徹教育長が明らかにした。 府教委は、受験生に英語力の習得への意識を高めてもらうことを目的に、現在の中1が受験する29年度の英語入試から国際関係学科がある高校などで、設問が全て英語の問題を採用する方針だ。ただ、問題が難化すれば全ての生徒に対応できないとして、難易度を3段階に分けた入試問題を用意。国語と数学も同様に3レベルの問題をそろえ、学校が選べるようにする。
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英語ではリスニングの配点割合を現在の5分の1程度から3分の1程度に高め、ライティングと合わせて総得点の半分を超えるように変更。「読む・書く・聞く」の3技能がほぼ均等になるようにした。 また、英検やTOEFL(トーフル)などの外部検定の入試への反映方法も示された。英検では準1級、TOEFLでは60点を取得していれば入試で満点に換算される。中原教育長は「入試が変わらなければ学校が変わらない。入試は生徒に一番分かりやすいメッセージだ」としている。
(ソース: msn産経ニュースwest ※下線部は引用者による)---------
というわけで、まず大前提として、全ての公立高校がこの難しい問題を採用するわけではない。
とはいえ、少なくとも三国丘なんかはSGH(スーパーグローバルハイスクール)に指定されているから、
2017年度の入試からは、この最難関の問題を使って入試が行われることになると思う。
「設問が全て英語」というだけで話題性もありそうだけど、
まあ、設問が英語というのは見た目がすごそうになるだけで、慣れれば大したことはないので、
注目すべきは、問題の中身がどう変わるか、だろう。
その詳細は、 大阪府立高等学校の英語学力検査問題改革について というこのページに詳しく書いてある。
まず驚くのが、
「聞く・書く」力をより試す問題に(50%以上を占める)
という項目。
今までの入試って、「読み」がメイン、「聞く」「書く」がまあオマケ程度に少しついてくる、
という感じだったよね。これ、別に高校入試だけじゃなくて、大学入試も同じだ。
でも、大阪府はこれをガラリと変えてきた。
なんと、「聞く」が33%、「書く」が20% もある。
(※追記※
実際のサンプル問題と配点を見たら、ちょっと発表されてるこの数字は誤解を招く表現かも? という疑問があるので、教育委員会さんに確認しました。
「指摘を受けて、それをもとにまたディスカッションする」とのご回答だったので、もしかすると配点などについては細かな変更がなされるかもしれません。)
「指摘を受けて、それをもとにまたディスカッションする」とのご回答だったので、もしかすると配点などについては細かな変更がなされるかもしれません。)
しかも、あとで紹介するように、この「聞く」と「書く」をミックスした問題(これはかなり骨が折れると思う)まである。
これなんか、TOEFLそっくりの問題だ(あとで紹介する)。
こうなると、もう、今までのように、「入試の前にリスニングの練習をちょこっとしておけば何とかなる」レベルではなくなる。
ライティングも、きちんとライティングの構成(ストラクチャー)を勉強して、
何回も書く練習をした子じゃないと、到底 太刀打ちできなくなるだろう。
こういう風に、テストの問題が変わることで、普段の勉強の中身もそれに合わせて変わることを
「ウォッシュバック効果」というんだけど、
まさにこれからの中学生の英語学習には、このウォッシュバック効果が最大限に発生するんだと思う。
一言でいえば、耳と手をもっと使う勉強に変わる。僕はとてもいいことだと思う。
じゃあ、「読み」は軽視されるかというと、そうでもなくて、
より高度な「読む」力を求める
ということも発表されている。
「読む」力というと、端的には「深く読む力」と「速く読む力」のかけ算ともいえる。
超英塾でも、授業中にWPMという話をよくする。
Words Per Minute、つまり1分間に読める英語の単語数のことだ。
大阪府の入試では、去年の問題ではだいたい35WPMだったらしいのだが、
これが96WPMにまで増えるらしい。つまり、約2.7倍の速さで読まないと追いつかなくなるわけだ。
まあ、たいてい英語の試験っていうのは年々単語数は増えていくものなんだけど、
ちょっとこの増え方は尋常じゃないね。タイマーを必ず手元において、かなり練習しないといけないだろう。
まとめると、中学生のうちから、「読み」「聞き」「書き」の3技能を本気で鍛えないといけない、ということになる。
まあ、もともと大阪府は、英検やTOEFLで一定の点数がとれていれば、入試の英語の点数を換算するっていうプランを出している(今年の1月にこのブログでも紹介)。
最終的にはやはり「話す」まで含めて4技能の試験が理想だけど、
今回の改革は、そこに至る通過点だ、という感じかもしれない。
で、その問題なんだけど、これが最初に書いたように、TOEFLなどの試験をかなり意識している感じだ。
衝撃的なやつからいこう。
別にこれ、読まなくてもOK。
ただ、「けっこう長めの文章だなあ」というのだけ分かると思う。
これが、リスニング問題のスクリプトだ。
リーディングじゃないよ。リスニング問題。この分量を、耳だけで聞くことになる。
でも、衝撃なのは、そこじゃない。
この問題では、
KenとMaryが、インターネットについて議論してるんだけど、
それを聞き終わったあとの、設問がこれだ。
Question:
What does Mary think about the internet? Explain her opinion and reasons in English. You have five minutes to write. Now begin.
これ、選択肢を選ぶ、普通のリスニングの問題じゃない。
耳で対話を聞いたあとに、その登場人物の意見を、理由とともに英語で説明するっていう問題だ。
しかも・・・たった5分。
これはかなりハードだ。練習しまくらないと無理だろう。
まず、文章で答えるんだから、きちんとリスニングができていないと、何を書いていいかすらわからない。
次に、聞き取れたとして、それを伝わりやすいストラクチャーへと構成して書かないといけない。
もちろん、そのときに単語や文法の基礎があるのは大前提だ。
しかも、問題文は、対話が放送された後に流れる。
つまり、リスニング中は、Maryだけじゃなくて、Kenの意見にも耳を傾けないといけない。
そして何より、5分。5分で書き終えないといけない。
ちょっと、笑ってしまった。っていうぐらい、すごい。だけど、これができるようになったら、
本当に強いだろうね。何度も何度も練習すべきだろう。
勉強する方も、教える方も、こういう問題は楽しい。
ということは、もう文法とか単語とか、そういうのはかなり早い段階で習得し終えて、
むしろこういう実戦的な問題に対応する練習を何か月もやらないといけないことになる。
普通の学校の進度に合わせて勉強してたら絶望的な気はする。
絶対にその他のサポートは必要になるだろう。
ちなみに、この問題は、リスニングが始まる前に、
このテーマに関連した文章を1分間で読む時間がある。
その文章がこれだ。
って・・・これ、中学生が1分では絶対に読み切れない。
ワードでカウントしてみたら、180語あった。
180WPM・・・ そう考えると、これは、
読み切ることを期待しているというより、1分で文章をザッと見渡して、
テーマの概要をつかみとるスキルを要求しているのかもしれない。
いわゆるスキミング(skimming)というスキルだけど、
こういうのも多分、今の学校教育では教えていないだろう。
いいなあ、中学生のうちからそんな勉強ができるなんて・・・楽しそう・・・。
で、この問題なんか、ほぼTOEFLの弟分?っていうぐらい、形式が似ている。
TOEFLでも、たとえばWriting問題で、
まず文章を3分で読む
➡それに関するレクチャーを聞く
➡その教授の意見を、文章と対応させながら説明する
という問題がある。大体語数は、150~225語、解答時間は20分。
・・・まあ、TOEFLですら20分あるのを、大阪府は5分。っていう時間制限は物凄いと思うけど。
他にも、Speaking問題でも、
45秒ぐらいで文章を読む
➡それに関する対話を聞く
➡その中身を60秒で話す
っていうセクションがある。
まあ、大阪府の問題は、この2つのハイブリッドな感じだ。
将来、高校生でTOEFLを受けるときの橋渡しにしようという意図なんじゃないかな。
僕はこの方針には賛成だ。
ほかにも、たとえばリーディング問題で
傍線部の文章と同じような意味をもった文を選ばせる問題がある。
これはパラフレーズ(Paraphrasing)というスキルの練習になる、
もちろんTOEFLでもほぼ必ず出題される問題形式だ。
単語に下線を引いて、これに近い意味の単語を選ばせる問題なんかも、
TOEFLに当然出てくる。
ちなみにこの問題は、中学生にutterという単語の知識を求めているというよりも(そうなのかもしれないけど)、
文脈、コンテクストから単語の意味を推測させたいんだと思う。
・・・と、このように、今回の大阪府の英語問題の改革は、
高校生になったときのTOEFL受験や、
大学生になったときの海外進学・留学への橋渡しをしようとする、
かなり意欲的なプロジェクトだと思う。
広い視野から英語問題の改革に着手しているこの姿勢は、僕は支持したい。
・・・それにしても、このままだと、学校の先生も、塾の先生も、
少なくとも上位校を目指す子に対しては、
英語の教え方をだいぶ改革していくことになるね。
超英塾は高校生のみんな向けの塾だけど、僕も何かしようかな・・・。
こんなエキサイティングな土地で英語の先生っていう仕事をできていることが嬉しい。
➡次の関連記事
大阪府公立高校入試の英語改革 【その2】 ~リスニング問題~
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※関連記事へのアクセスが多いので、
これ以外の記事についても、こちらページにまとめました。
→大阪府公立高校入試の英語改革