2015年12月27日日曜日
来年度からの英検で見える、「英語」業界の動き。
前にも書いたけど、次の1月の英検は、
高1で2級を受けたり、高2で準1級を受けたり、
けっこうハードなレベルにチャレンジするぞっていう子が複数いる。
今回の冬合宿でも、英検を受ける組の子たちは、過去問と頑張って戦っていた。
それで、その英検も、来年度から、リニューアルされることが決まっている。
来年『度』なので、2016年の4月以降の話だ。
今の、そして将来入ってくる塾生のみんなにも影響のある話なので、少し紹介してみよう。
これを知っておくことで、世の中の英語業界の流行もけっこう分かるので、知っていて損は無いと思う。
★2級(ライティング導入 etc.)
まず大きく変わるのが、2級だ。ちなみに、「2級=高校卒業レベル」ぐらいの目安。
この2級に、ライティング問題が導入される。
「今後、オンラインで買い物する人は増えるでしょうか?」
みたいなトピックが与えられて、それに対して80~100語で自分の考えを書くというもの。
構成も決まっていて、「自分の意見」+「その理由2つ」だ。
80~100語、と聞くと多いと思うかもしれないけど、
たとえば、英検が発表している模範解答は全部で6文。
そこまで恐れなくて大丈夫だ(けど、もちろん練習が必要になる)。
これはとても良い動きだと個人的には考えている。
今まで、2級において「書く力」っていうのは、並び替え問題で計測しているという建前だったと思う。
どういうことかというと、実際に答案を書いてもらって、それを人の手で採点するのは手間がかかるから、
その代わりに、「並び替え問題が解ければ、英語を書く力もあると判定することにしよう」となっていた。
これを、『間接測定』って呼んだりする。(書く力を、間接的に測定しているから。)
でも、「並び替え問題ができれば、ライティングの力がある」っていうのは、やっぱり怪しいと言わざるを得ないだろう。
それが今回、
「ライティングテストの導入に伴い、語句整序問題を削除します。」とあるから、
並び替え問題が消えて、かわりに正面からライティングの問題が出されるようになる。
こうなれば、受験者だってライティングの練習そのものに取り組むようになるから、
これでこそ、書く力を養うことができるはずだ。
今、塾の『英語4技能クラス』でもライティングをトレーニングしまくっているけど、
それと、この英検のさらなる「4技能」化は、同じ方角を向いていて嬉しい。
(※4技能= 読む・聞く・話す・書く という4つのスキル。)
★1級・準1級(ライティング難化)
ところで、今までは、1級と準1級のみ、ライティング問題があったわけだけど、
その準1級のライティングは、「友達から送られてきたメールに返信する」というものだった。
しかし、
上の2級の問題を見ればわかるように、
「2級が自分の意見を述べる問題。準1級がメールを書く問題」だと、
釣り合いがとれなくなってしまう。
そういうわけで、難易度や形式を揃えるために、準1級のライティング問題も同時に変わることになった。
語数は2級より少し増えて、120~150語程度。(ちなみに、なんと模範解答は、またも全部で6文。)
これもトピックが与えられて、それに対して自分の考えを述べる問題だ。
たとえば、「小規模の、独立したお店や事業は、現代社会を生き抜くことができる」
という命題に対して、賛成or反対を述べるという感じ。
メール問題から、だいぶテイストが変わったことが分かると思う。
そして、形式は、
☆ Introduction(導入)
☆ Body(メイン)
☆ Conclusion(まとめ)
という、定番の順序で書くことが求められている。
これはちょっと面白い。
どういうことかっていうと、
たとえば今、塾の『英語4技能クラス』で生徒の子たちと練習しているライティングは、
TOEFL等の英語テストで通用するエッセイを目指しているので、
最低でも300語は突破するようにアドバイスしている。
300語ぐらいだと、「Introduction」があって、かつ「Conclusion」段落があっても、全く違和感はない。
一方、準1級の「120~150語」だと、短すぎて、
「Introduction」と「Conclusion」の両方を入れるのは、ちょっと大げさすぎる印象だ。
正直、読み手としては、
最初にIntroductionで読んだ内容を、Conclusionですぐにまた読まされるという感じになるだろう。
(もちろん、パラフレーズといって、同じ内容でも表現の方法を変えるテクニックを使うことになるから、さすがに全く同じ文を繰り返すことにはならない。)
ただ、それでもこの構成を要求してくるっていうことは、
「多少は変でも、それでもエッセイ形式のライティングに取り組むときの、スタンダードな『型』を習得してほしい」という
メッセージなんじゃないかと感じる。
今後、もっと長いライティングをするときには、当然この「Introduction」も「Conclusion」も標準的に使うことになるから、
そのための助走というか、入門として、準1級のライティング問題にチャレンジしてほしいっていう意図なんじゃないだろうか。
と、勝手に推測している。
だとすれば、これはもちろん歓迎すべき動きだ。
(まあ、感覚的には、準1級なら、もっと長い語数を要求してもいいような気がするけど・・・採点とかの関係で難しいのかもしれない。)
そして、さらに1級のライティングも語数が増えて、
今までの「200語」程度から、「200~240語」程度へと変化する予定だ。
(それでも、上で紹介した『300語』と比べると、短めな印象ではある。)
★4級・5級(スピーキング導入)
これも、「ライティングやスピーキングを含めて、4技能の力をバランスよく伸ばしていこう」という、
今の英語界の流れをかなり汲んでいる。
ただ、実質的に、4・5級でも全員に面接試験をやるのは大変だろうなーと思っていたら、
かなりユニークな導入方法になっていた。
ちょっと英検の発表資料から引用させてもらうと・・・
(赤字はこちらで足しました。資料の出典は、このブログ記事のラストに載せます。)
~~引用~~
一次試験(筆記・リスニング)の合否に関係なく、申込者全員に受験機会をご提供いたします。
コンピュータ端末を活用した録音形式で実施いたします。また、自宅や学校のパソコン、およびタブレット等から、インターネット上のスピーキングテストサイトにアクセスして受験いただきます。なお、受験日の指定はなく、期間は1年間を有効といたします(注:受験回数は1回のお申し込みにつき1回のみとする)。したがって、時間的・地理的制約は無く、いつでも・どこからでも受験いただけます。
級認定に関しては、従来どおり、一次試験(筆記・リスニング)の結果のみで合否を判定いたします。なお、スピーキングテストの結果は、現状の級認定とは別に、「4級(5級)スピーキングテスト合格」として判定いたします。
~~引用おわり~~
最初、読みながら、「えぇっ! 申込者全員?!」と一度驚き、
そして「自宅のパソコンから受験~~~?!」と、二度驚かされた。
「自宅から受験って、ズルし放題じゃないか・・・」と思っていたら、
なんと、
「級の合否は、スピーキングテストとは無関係に判定」って・・・三度目のビックリだった。
というわけで、スピーキングテストは、あくまでオプションという感じの扱いに落ち着いたようだ。
いろいろ議論した結果の妥協策なんじゃないかと推測するけど、
そうだとしても、スピーキングテストを、4・5級に導入したという点だけでもスゴイことだと思う。
たぶん「級と関係ないから、無視」っていう派の人も出てくるだろうし、
一方で「せっかくだから、スピーキングの方もチャレンジしてみよう」という人たちも登場するはずだ。
塾で高校生の子たちと4級・5級にチャレンジすることはないと思うが、
大切なのは、それよりも、
「4級・5級という基礎的な級においてすら、スピーキングテストが導入された」ということだ。
もはや、この流れが元に戻ることはないだろう。
たぶん、将来的には、ライティング問題が3・4・5級にも導入されていくんじゃないだろうか。
そうなれば、あの英検でも、全ての級において、4技能が試されることになる。
かなり画期的なことだと思う。
まとめ
というわけで、超英塾でも、来年度から先は、
さらに『英語4技能クラス』の重要性も増していくだろう。
何より、英語は言語なので、使えてナンボというか、
せっかく英語を頑張るんだったら、「話す」、そして「書く」力も含めて、
実際に将来「使える」というところまで高められた方が、楽しいに決まっている。
今回の英検の発表に触れて、生徒のみんながそうなるお手伝いをさらにしていこうと、改めて考えることができた。
それにしても・・・
こうなると、今回、1月に準1級と2級を受ける塾生の子たちは、
「旧形式で出題される、記念すべきラストの回」で受験する経験ができることになる。
なんかラッキーというか、記念にも残る感じでいいなあ。
まあ、問題が将来どう変わることになろうと、
今回受ける子にとっては、目の前にある問題に全力でぶつかるだけだ。
チャレンジングな目標設定だけに、しっかりと成長のチャンスにしてほしいなと思う。よし。
【この記事で使った資料の出典】
PDFファイルで開きます。
上で紹介した以外にも、変更点が少しあるので、気になる人はどうぞ。
実用英語技能検定2016年度第1回からのリニューアルのお知らせ