僕が小学生のころ、「ノストラダムスの大予言」というのがあった。
知ってる? 知らないかもな・・・
でも、保護者の方に聞いてみてほしい。ほぼ100%知っていると思う。
簡単に言うと、
「1999年7月に『恐怖の大王』が地球にやってきて、それにより世界は滅亡する」
という、恐ろしすぎる内容だった。
こんなに小学生の心を魅了する&恐怖に陥れる説もなかなか無いだろう。
当時、たぶん一部の大人も含めて、
「そんなバカな話 信じるわけないやろ!」という気持ちと、
「でも、もし本当にそうなったらどうしよう・・・」という怖れが入り混じった気分を、
多かれ少なかれ抱いていたように思う。
で、よく友だちが、こんなことを言っていた。
「もし地球が滅亡するんだったら、頑張って勉強しても仕方ないよなー」
た、たしかに・・・。
(↑僕たちを恐怖に陥れたノストラダムスさん)
これ、けっこうな数の子たちが言っていた気がする。
「どうせ地球は滅亡するし~」って。
で、いざ1999年7月になってみると・・・
そう・・・ 全然、滅亡しなかった。
たしかに地球はいま様々な問題で危機に瀕しているけど、
それでも、「恐怖の大王」は現れなかった。
まさかと思うけど、当時、
「うん、どうせ地球は滅亡しちゃうんだから、勉強も仕事も捨てて、
運命の日がくるまでダラダラ生きるぞ!」
と心に決めて生きてきた人がもしいたとしたら、
その人は1999年7月が過ぎ去ったその日、顔面蒼白だっただろう。
「約束と違う!」と言ってももう遅い・・・。
ある意味、壮大なギャンブルだ。
なんでこんな話を思い出したかというと、
最近、自動翻訳機の話題をニュース等で目にする機会が多いからだ。
たとえば、これ。
---引用---
10言語同時翻訳アプリ開発へ 五輪にらみ総務省とNTTなど
総務省はNTTやパナソニックと協力して、日本語を含む10言語を高い精度で自動翻訳するアプリ(応用ソフト)の開発に乗り出す。外国人が病院で症状を説明するような複雑な会話もスマートフォン(スマホ)やタブレット(多機能携帯端末)で瞬時に正しく訳せるようにする。2015年秋から実証実験を始め、訪日外国人が増える20年の東京五輪までの実用化を目指す。
---引用終了(出典:日本経済新聞電子版)---
これ自体は、とても良いニュースだと思う。
言語の壁が薄くなっていくのは喜ばしいに決まっている。
ただし、もしかして、これが現代の「ノストラダムス」なんじゃないかな、と、
ふと頭に浮かんだ。
シンプルに、
「どうせ自動翻訳機ができるんだから、英語の勉強とかしても仕方ない!」
という人が現れても、全然おかしくない。
僕も中1のときはひたすら英語が苦手だったから、
当時の僕がこのニュースを読んだら、もしかすると
「ほら!やっぱり英語なんて要らないって!」と大喜びしていたかもしれない。
ただ、これは「ノストラダムス」だと思う。
もしかしたら、あと100年ぐらいしたら、
かなり高い完成度で自動翻訳機が実用化されているかもしれない。
今でも、簡単な文章なんかだったら、自動翻訳の性能はすごい。
でも、たぶん、今の子たちが社会に出たときに、
全ての仕事で使えるぐらいのレベルになっているかっていうと・・・
それは、ものすごく可能性は低いと思う。
例えば、仕事で交渉しているときに翻訳機を使ったとする。
でも、翻訳機の出した文章が、本当に自分の意図と合致しているかは、
その場で調べようがないので(それが分かるような人なら最初から翻訳機は使わない)、
これにはかなりのリスクが伴う。
「あのとき私はこう言ったじゃないか!」
「いや、翻訳機による英語ではそんなニュアンスは含まれていなかったですよ」
・・・こんなことでは危険すぎるから、契約などの重要な場面では翻訳機に頼れないだろう。
他にも、ミーティングで翻訳機を介してコミュニケーションをとると、
必ず一定のタイムラグが生じてしまう。
これは、スイスイと議論したいときには、かなりストレスだ。
それに、自分の声にかわって、翻訳機の声が相手に言葉を届けているっていう状況は、
ちょっと不自然だろう。
まして、仕事後にプライベートで食事にいったりしたときも常に翻訳機で楽しくおしゃべり、
っていうのはちょっと考えにくくないだろうか。
『翻訳機を使ってコミュニケーションをとる、国際結婚した夫婦』なんて、
なおさら考えにくい。
「私はあなたを愛しています。」って機械の翻訳で言われても、
ちょっと感動しづらいだろう。
そしてその夫婦の子どもは、機械翻訳された言葉を学んでいくのか?? 等々。
・・・もう一度言うけど、翻訳機はもしかすると、100年後ぐらいにはほぼ完璧になっているかもしれない。
でも、みんなが大人になる頃には、まだそうなっていないだろう。
「いや、先生、技術の進歩はものすごいんですよ。
翻訳機だって信じられない速度で完成するかも・・・」
という意見は、僕も完全には否定できない。
できないけど、それは間違いなくギャンブルだ。
「近いうちに完成するかどうかわからないですが、
とにかく翻訳技術に全てを賭けて、私は一切英語を勉強しません!」という人がいたら、
この人はかなり度胸があるけど、
やはりそれは「賭け」だということを忘れてはいけない。
ノストラダムスの「恐怖の大王」はやってこなかった。
人々は、「もしかして1999年7月に滅亡するかも」という気持ちをどこかに抱きつつも、
「そんなこと起きない」というより大きな可能性をもとに、勉強し、仕事してきた。
そして、実際、ノストラダムスはハズレた。
人々は、ホッとして、「ああ、ちゃんと、やることやっといて良かった」と安心し日々の生活を続けていった。
だから、ギャンブルで人生を棒に振りたくなければ、
って何かギャンブル依存症の人向けのブログみたいだけど(笑)、
「自動翻訳機」説に頼らず、
とにかく僕は英語の実力をコツコツ身につけていくことをオススメしたい。
ま、何より、英語の勉強は楽しい(と僕は信じている)ので、
自動翻訳機が完成したとしても、英語は勉強してほしいけど・・・。
自分の頭と声で「英語」という別世界の言葉を操る喜びは、
レーシングカーで日常とは全く違う世界を味わうレーサーの喜びに似ていると思う。
「世界が広がる」のは間違いない。
そしてそれは、心から楽しいことだ。
超英塾のポリシーにも、『LOVE ENGLISH.』というのが入っているんだけど、
それはこういう気持ちがあるからだ。
というわけで、みんな、楽しく頑張ろう。 よし。